SOC 2とISO27001は何が違うのか — AIサービスの調達審査でどちらを見るか
- ISO27001は「仕組みがあること」の認証、SOC 2は「仕組みが期間を通じて機能したこと」の監査報告書。証明の性質が違う
- どちらもAI固有のリスク(学習データへの利用、モデル提供元の再委託)は対象外。別途契約で確認する必要がある
- 調達審査では認証の有無より、適用範囲(スコープ)に対象サービスが含まれているかを見る
なぜこの2つが並べて出てくるのか
生成AIサービスの導入を検討すると、ベンダーから「SOC 2 Type II を取得済み」「ISO27001認証取得」といった資料が出てきます。どちらもセキュリティに関する第三者の評価ですが、証明している内容が違うため、片方があればもう片方は不要という関係ではありません。
調達審査の現場では「両方あるから安心」「片方しかないから不安」といった判断になりがちです。しかし本来見るべきなのは、その証明が自社の懸念をカバーしているかです。
証明の性質が違う
| ISO27001 | SOC 2 | |
|---|---|---|
| 種類 | 認証(規格への適合) | 監査報告書(統制の評価) |
| 発行元 | 認証機関 | 監査法人・会計事務所 |
| 何を示すか | 情報セキュリティの管理の仕組みがあること | 定めた統制が実際に機能したこと |
| 出てくる形 | 認証書(1枚) | 報告書(数十ページ) |
| 主な地域 | 国際的(日本でも広く普及) | 北米中心 |
ISO27001は「情報セキュリティを管理する仕組み(ISMS)を作り、回している」ことの認証です。仕組みの存在を示します。
SOC 2は、ベンダー自身が定義した統制目標に対して、監査人が検証した報告書です。とくに Type II は、一定期間(通常6〜12か月)にわたって統制が機能していたかを検証します。運用の実績を示します。
この違いから、実務上の含意が出てきます。
- ISO27001があっても、個別の統制がどう運用されたかは分からない
- SOC 2があっても、それはベンダーが選んだ統制項目についての評価
調達審査で本当に見るべきは「適用範囲」
認証や報告書の有無より重要なのが、**スコープ(適用範囲)**です。
大企業のISO27001認証が、実際には特定の事業部やデータセンターのみを対象にしている例は珍しくありません。導入しようとしているAIサービスが、その範囲の外にある可能性があります。
確認すべきことは3つです。
- 認証書・報告書に記載された適用範囲に、対象サービス名が含まれているか
- 有効期限は切れていないか(ISO27001は3年ごとの更新、SOC 2は報告対象期間がある)
- SOC 2の場合、Type I か Type II か(Type I はある時点の設計評価のみ。運用実績は含まれない)
3つめは特に見落とされます。Type I は「設計上はできている」という評価で、実際に守られていたかは検証されていません。
どちらもAI固有のリスクは対象外
ここが最も重要な点です。ISO27001もSOC 2も、AI固有のリスクを評価する枠組みではありません。
どちらも情報セキュリティ一般(アクセス管理、暗号化、インシデント対応など)を対象としており、次のような論点は含まれていません。
- 入力したデータがモデルの学習に使われるか
- モデルの提供元が別会社の場合、その会社の統制はどうなっているか
- 出力の誤り(ハルシネーション)による業務影響をどう扱うか
- モデルの更新によって挙動が変わったとき、誰がどう検知するか
したがって、認証があることを確認したうえで、AI固有の論点は契約書と個別のヒアリングで詰める必要があります。
AIのマネジメントシステムを対象にした規格としては ISO/IEC 42001 があり、2023年に発行されています。ただし取得しているベンダーはまだ限られるため、現時点では「あれば加点」程度の位置づけになります。
稟議に書くときの整理
社内説明では、次の順序で書くと論点がずれにくくなります。
- ベンダーの第三者評価: 何を取得しているか、適用範囲に対象サービスが含まれるか
- AI固有の確認事項: 学習利用の有無、データの保存期間、再委託先、リージョン
- 自社側の統制: 誰が使えるか、何を入力してよいか、記録をどう残すか
1だけで判断すると、2と3が抜け落ちます。逆に1を軽視すると、ベンダーの基礎的な管理体制を確認しないまま契約することになります。
2と3の具体的な確認項目は、生成AI導入セキュリティチェックリストにまとめています。
まとめ
- ISO27001は仕組みの認証、SOC 2は運用実績の監査報告書。性質が違うので代替関係にはない
- 有無より適用範囲を見る。対象サービスが範囲外なら意味がない
- SOC 2は Type II かどうかを確認する。Type I は設計評価のみ
- どちらもAI固有のリスクは対象外。学習利用・再委託・リージョンは契約で個別に確認する